上の息子は一年生だ。
去る3月、幼稚園を卒業した。
うちの息子は会話が不得手だし、興味の無いことには冷たいくらい興味が無いので、常々『愛情の注ぎがいが無くてなんだかごめんなさい』と思っていたのだが、先生方は全力で息子の初めての集団生活を彩ってくれた。
このご時世に珍しいくらいのスポ根熱血園なので、正直最初は引いていたが、今となってはあそこで良かったと感じている。
ノリノリで登園したことはほとんど無いが、泣くほど嫌がることも少なかったし。
小学校入学後3ヶ月で社会性がびっくりするくらい伸びたが、その下地は幼稚園の先生方が育んでくれたように思う。
卒園式で、担任の先生が引くほど泣いていた。
教育機関（なんなら僕の商売もそうだが）の人たちは人生の『一時期』に関わる人たちだ。
言わば『前進している人に一時期伴走する人たち』なので、関わる年齢が若ければ若いほど、相手の記憶には残らない。
多大な影響を与えるとても尊い仕事だが、幼稚園の担任のことを終生覚えている人は少ないだろう。
それでも、先生は泣いていた。
それを見て、園児たちは無邪気に笑っていた。
あなたはきっとわたしを忘れる
わたしはずっと忘れないきっと
そんな単語が浮かんだので、ストーリーテリングしてみました。
それでは聴いて下さい。
Dr.Tで
『ブロッサム』
Lyric:Dr.T
Beats:Earlyoak
verse1
ケース1 Aちゃんはオシャレが大好き
ママの化粧道具の扱いも小慣れて
『大きくなったらプリンセスになるんだ』
そう言い切る風格は既に淑女で
天真爛漫なあなたの目に映る
豊かな可能性こそがわたしのカンフル
あなたが『凄いでしょ？』と微笑む瞬間
無条件に降伏 ライカ宣言オブポツダム
ケース2 SくんはAちゃんのお兄ちゃん
動物が大好きで お話は苦手で
自他の境界が曖昧なあなたには
十把一絡げは苦痛だったことでしょう
それでもあなたが あなたなりに見せてくれた
適応への努力 それのみを評価する
和太鼓の演奏 運動会のマスゲーム
あなたは あなたなりの表現で参加し
hook
あなたはきっとわたしを忘れる
それでいい それくらいでちょうど合う帳尻
それだけ日々に心が動いて躍っていることの証左だから
わたしはきっと忘れないずっと
君やあなたが わたしに見せた
色とりどりの自我の萌芽に
立ち会えたことの幸福を
verse2
ここで出会った友と生涯を共にする
そんな子がどれだけここにいるだろう？
私はこの場を任されたただの傀儡
波風立てずに終わることが命題
からかいかいじめの境界は曖昧
いさかいはやめてよ面倒くさい毎回
ある日の終わりの会 声上げる肥満児
告発する日々 与えられた痛み
ガキが改心？一縷の望みも持たずに
加虐は不可逆 溝は永遠に埋まらない
そう信じ生きてた 諦めに似ていた
それでも子供たちは互いを認め合い
届く風の噂 既に不惑目前の
立派な大人たち 今もなお輝き
南島と072 隔たるは距離だけ
縁は今や線となり 優に結ぶ1000km
hook
あなたはきっとわたしを忘れた
それでいい それくらいでちょうど合う帳尻
あなたがあなたを保つための勇気を
わたしはただそこで見ていただけだから
わたしはきっと忘れないずっと
君やあなたが わたしに見せた
あやまちをつながりへ変える強さに
立ち会えたことの幸福を
verse3
ジュニアハイスクール その名の通り
少年から大人への階段の途中
ここでは矛盾が日常茶飯事
抗いと従順が同居する毎日
昨今のご多分に漏れず荒れる教室
ファックアップな先公と呼ばれる俺も孤独で
40人の思春期 一人一人
目を向けたいが俺の目はあいにく一組
それでもなお俺はこの場を去らない
義務と権利の関係性を伝えるのを止めない
なぜならここはこの子らに最後に
庇護と教え両面を与える学舎
迎える卒業の日 マスク外し凛々しく
少年の面影は祝電に面映ゆく
この素晴らしき良き日よりほんの少し
良い日の種がこの先には芽吹いてる
hook
あなたはきっとわたしを忘れる
それでいい それくらいでちょうど合う帳尻
あなたが考え抗い抜いた日々に
わたしはただ寄り添っただけだから
わたしはきっと忘れないずっと
君やあなたが わたしに見せた
少年から大人に変わるその刹那へ
立ち会えたことの幸福を
アウトロ
季節は巡る
瞬く間に
春風のまにまに
また舞う桜
いつかのつぼみが
咲き誇るさなかに
新たな種子が
芽吹いてくチラホラ
