Dr.T's room

相談員を生業とし音楽家を生き甲斐とする2児の父の話

色を足す、綺麗に

僕は基本的にミクスチャーバンドばかりやってきたが、一時期インスト(ボーカルが不在でサウンドのみを聴かせるバンド)もかじっていたことがある。

 

NANAIROという名前のそのバンドは、たしか一人暮らしを始めたばかりの26歳頃に始動した。

 

結成当初のコンセプトが当時傾倒していたクラブミュージックを生バンドでやってみようぜ!だったので、初期はカバーバンドだった。

80kidzやTHE LOWBROWS、Capsuleなんかやっていた。あときゃりーぱみゅぱみゅもやった。

 

バッキバキの四つ打ち電子音楽を、シンプルなギターベースドラムの3ピースでやるのは中々力業だったが、ギタリストが器用にメロディからバッキングから彩ってくれたので、結構楽しかった。

 

そんな感じで1、2回ライブをこなした後、やはりパーマネントにやるバンドならオリジナルがやりたいよねという話になり、作曲を開始することにした。

 

NANAIROでの制作は僕のバンドライフを大いに広げてくれた。

 

バンド人生初のシーケンス同期(あらかじめPCで作成したシンセフレーズやサンプル音源をスピーカーから流しながら生演奏すること)を導入したのだ。

 

これが楽しかった。

 

シーケンス作成は完全に僕の担当だったので、日夜パソコンと格闘し色んなことを試みた。

 

最近になってラップをやり出しドクタードクターと宣っているが、僕が音楽をやっていて1番ハカセっぽかったのはNANAIRO全盛期ではなかろうか。

 

ベースそっちのけで弾けない鍵盤を奏で、ズレた箇所を画面上でクリックして調整する…を繰り返す、実験のような時間だった。

 

そんなNANAIROの活動中期、あるピアニストが加入する。

Dr.Tのしみったれたエモラップに不可欠な存在Earlyoak氏だ。

 

ピアノという音色が足されたNANAIROは、また少し様変わりした。

 

鍵盤の音色はエモい。厳密にはキーボードを弾いてもらっていたので生ピアノじゃない音色も出すが、それでもシーケンスで流れるのと人が弾くのじゃ明らかに違う。

 

そしてエモい音が入ると、不思議とバンドの方向性もそっちに傾く。

 

元々電子音主体で作っていたシーケンスはだんだん環境音とかバイオリンのサンプリングとかが増えていき、後期NANAIROは完全にポストロックバンドだった。

(※ポストロックの詳細については、上手く説明出来る自信が無いので割愛する)

 

そんなNANAIROも活動休止して久しい。

僕の上の子が産まれたりコロナ禍になったり他のメンバーも子が産まれたりと、いっぱしの中年になり足を止めた。

 

今でも年1、2回は4人だけで飲みに行くので関係性は取れている。

いつかまたやりたいな。

 

ラップを上げているYouTubeチャンネルを遡れば3人時代4人時代の楽曲ダイジェスト動画があるので、良ければ聴いてみて欲しい。

 

 

さて、それはそれとして今僕の音楽ライフの中心は専らラップだ。

 

そんなNANAIROの楽曲を一曲ビートジャックしてみました。

 

聴いて下さい、Dr.Tで

『Morning sheep』

 

Lyric/Dr.T

Beats/NANAIRO

 

イントロ
太陽と月が 交差する間(あわい)
ほんの数時間 顕現する羊
邂逅を求めて 大望を抱いて
はるかなる頂 見上げて息を呑む

Aメロ
夜も明けぬ午前3時 空気吸い込む
凍てつく冬の冷気が 全身を巡る
細胞に直で 水を差すイメージ
灰色の大脳内 色を足す綺麗に

『薄明の頂で踊る羊1匹
大抵の望みならば叶えるらしい一目で』

思えば何一つ 上手くいかぬ生活
上がらぬうだつ 藁にもすがる
思いでかける 望み一縷

Bメロ
暗がりの峠をただ1人
月明かり届かぬ獣道
孤独と肩を組み
舌を打ちただ登り

瞬間唐突 開ける視野角
桃源郷と 見紛う異世界
凍る針葉樹 冬眠する生命
疲れ切った体引きずって
頂に立った暁

サビ
morning moon is gone
leaving the morning haze
morning haze is gone
leaving the morning dew
morning dew is gone
leaving the morning sheep
morning sheep was there
just there just there

(残月は去った、朝靄を残して
朝靄は去った、朝露を残して
朝露は去った、薄明の羊を残して
薄明の羊はただそこに居た)

 

Cメロ
『薄明の頂で踊る羊1匹
大抵の望みならば叶えるらしい一目で』

一目どころか二度見三度見
ひたすらにそれを眺めてはみたが
羊はただの羊でしかなく
時は進む容赦もなく

辿り着けば上がるうだつ
苦楽超えて待つはゴール
そんな与太に感化されて
こんな無茶な踏破選ぶ
たかが獣一目見ても
未だ俺は俺のままだ
いつも怯え逃げる事を
選び続け今の俺だ

サビ
morning sheep is gone
there's nothing left now
morning sheep is gone
it will just end in vein
morning sheep is gone
I can't go on like this
morning sheep is gone
that's all I learned it

(羊は去った
何も残さずに
羊は去った
ただ虚しさだけは残った
羊は去った
俺はこのままじゃだめだ
羊は去った
それだけを学んだ)

アウトロ
後付けの物語を語って
聞こえの良い結論を嘯いて
裏腹の思いは仕舞い込んで
うたかたの決意と共に歩んでいく

 

※解説

リリックは完全にストーリーテリングで、原曲のタイトルと音像から膨らませて書いた小話。

割と皮肉っぽい話になっている。

 

そしてhookやverseと呼ばずにサビやAメロと表現するのは、これは元々バンドの曲ですというDrの無駄なこだわり。

 

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