Dr.T's room

相談員を生業とし音楽家を生き甲斐とする2児の父の話

少年Tの戦い

僕は(巡り巡って今もだが)物心がついた時から中学まで、とても太っていた。

 

生来の運動嫌い+運動音痴、おまけに母の飯が美味かったこともあり、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが全く取れていなかった結果、思春期を迎える頃には、樽のようなボディを携えた少年となっていた。


多感な時期に太っているという事実は人格形成に大きな影響を与えると思う。 


おまけに僕は成人を迎える頃までとても腋が臭かった。

デブ+ワキガのもたらすコンプレックスはとてつもない。


ヤンキー隆盛の教室で全く居場所の無かった僕は『見かけなんかより文化度が高い奴が1番カッコいいのだ』とベタな厨二病をこじらせ、図書館とレンタルビデオ店に足繁く通っていた。

 

 

 

図書館では中島らもに出会った。

四つ上の姉からもらったものは数限りないが、彼を教えてくれたことが一番の恩かもしれない。

 

小説ももちろん傑作揃いだが、彼の真骨頂はエッセイだと思っている。

 

彼はフーテンで、アル中で、どうしようもない大人だったが、不適応な人間にどこまでも優しかった。

 

学校で1番存在感のでかいヤンキー(僕の学校には番長がいた。平成なのに)でも無く、一目置かれる特技も無い僕の寄る辺は間違いなく彼だった。

あと、大槻ケンヂのエッセイも貪るように読んだなそう言えば。

 

 

とは言え、所詮中2。

 

レンタルビデオ店では、ひたすらにアクション娯楽作の洗礼を浴びた。

ベタなどんでん返し系サスペンスも好きだった。

 

そりゃ最初はチャップリンとかクロサワとか名画と言われるものに手を出したし流石にその辺まで行くと面白かったが、アンニュイなフランス映画とか、芸術性全開の映画とかは、てんでダメだった。

 

ヤンキーでは無いにせよ男の子なので、やっぱりドカーンとかバゴーンとか擬音が欲しかった。

 

マメなので『週に6本見る』とか目標を立てたり、映画ノートを付けてみたりしたが、結局◎には娯楽作ばかりが並んでいた。

 

 

 

あの頃、僕は戦っていた。

 

同じ小学校から上がった幼馴染がいたので、友人もそれなりにいたが、それでも人生で1番苛立っていた気がする。

二言目には『どいつもこいつも!』と言っていた(と、後年母が言っていた)。

 

『誰よりも本を読んでいて、誰よりも映画を観ているという自分』を作り上げる戦いを、誰に頼まれたわけでも無いのに、していた。

 

あの3年で得た価値観や知識がその後無駄になったとは全く思わないが、動機がコンプレックスからであったことは、疑う余地もない。

 

 

 

戦いは高校に上がると呆気なく終わる。

 

バンドを組んだからだ。

バンドは1人では出来ない。

互いにある程度認め合い、音や意見を交わす必要がある。

 

今はなき地元の音楽スタジオに『バンドは社会の縮図!!』と書かれた色紙が貼ってあったが、まさに僕の社会性はバンドで育まれた。

クラブや先輩付き合いをロクにしてこなかった僕にとって、あぁやって集団や曲を作り上げた体験は、絶対に今の自分に活かされている。

 

 

でもそれは少年Tにとってまだ見ぬ未来だ。

 

少年Tはエピソード0なのだ。

 

太って捻じ曲がったマイオリジン。

価値観を研ぎ澄ませろ。

かっこいいや素敵をかき集めろ。

鍵は、その先にある。

 

 

 

というラップです。

聴いてください、Dr.Tで『エピソード0』

 

 

 

verse1
日陰者のナード 俺のことなど
見ちゃいねぇ 教室に居場所など無く
ここで評価されるは 腕っぷしと脚力
からっきしなら遠巻きに 眺める他無く

肥大化するコンプ抱え握るコントローラー
苛立ちは募るばかり滲む悔し涙
救い求め手繰り寄せる新たな価値観
足繁く通い詰めるアルファと図書館


拠り所はよりどりみどり
世にあまねく広がる四方山夜咄
手に取った一冊はラモナカジマ
シニカルな軽口はどこか優しく


患った厨二病は今に至るまで
かかずらったまま三子の魂百まで
人生のティーチャーは教えてくれた
カルチャーは確実に暴力に勝る

 

hook
novel game movie&comic
1人部屋で研ぎ澄ませる牙
これが俺の武器 俺の価値 俺の主義
そう信じ奮い立つ 思春の候

Before I met homie & music
集い奏で歌い明かす夜
これが俺のフッド 俺のプレイス 俺のユース
出会うのはまだ先 別のお話

 

 

verse2
今日のテストは社会 日本史と世界史
担当教員は人気取りにご執心
挙句にリーク 出題範囲丸ごと
おーシット心底くだらない社会


吐き捨て直行するアルファフォーラム
目の前には山の様なビデオグラム
今日は何をレンタル? 一通り揃ってる
まずはチャップリン 世相切るアイロニー


推しの俳優を端からdigる
ピットにスペイシー、ウィリスにセガール
ニコラスケイジならザロックが至高
コネリーの叔父貴も良い味出してる


自らに課したノルマ週に6本
ジャンル別書き分け 批評家を気取る
最高評価は結局 アクション娯楽作
ウェズリースナイプスのブレイド
ノーダウト

 

 

verse3
拝啓14歳 何を考えてる?
答えるまでもない どうせハダカとカルチャー
お前に伝えたい おそらく勘付いてると思うが
世界はどうやらそこだけじゃない


孤独を感じる夜もあるだろう
迎合の筋道は無いか頭捻るだろう
だがしかしそこはただ家が近いそれだけで
十ぱ一絡げ閉じ込められた蠱毒


この先にこそお前の意思が反映される
人生で初めて選ぶ選択肢
だからこそそこから先が正念場
選んだ先で掴み取るお前だけの立ち位置


俺は随分先にいるから当然
この先の帰結もよく知ってる
どう進んだって構わないが一つだけ
入学式のあのロン毛とは仲良くしておけ

 

hook
novel game movie&comic
1人部屋で研ぎ澄ませる牙
これが俺の武器 俺の価値 俺の主義
そう信じ奮い立つ 思春の候

Before I met homie & music
集い奏で歌い明かす夜
これが俺のフッド 俺のプレイス 俺のユース
出会うのはまだ先 別のお話

 

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